愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

「そうか。ちなみに仲のいい〝夫婦〟なら……こうする」

 彼が少し空いていたスペースを詰め、お互いの肩が触れる距離に座り直す。どきりと鼓動が跳ねた直後、大きな手が私の肩を包み込むように抱いた。

 さっきよりも大きく鼓動が揺れ、カップを持っている手元が狂いそうになる。

 コーヒーがこぼれないよう、慌ててカップを両手で持ち直した。

「ち、知隼さん?」
「うちの両親は、よくこうしていた。子どもが見てる前では勘弁してほしいと思っていたが……大人になってみれば、多少理解できる。俺の父もパイロットだったし、母は母で忙しい航空整備士だったから、互いのシフトが合わない日は多かっただろう。そのぶん触れ合える時間が貴重で、だからこそいつも寄り添っていたんだろうな」

 知隼さんは優しく私の肩をさすりつつ、ご両親の話をする。

 私たちの関係はご両親のそれとはまったく違うのに、寄り添っていても不快感はなかった。むしろ、知隼さんの香りや体温をそばで感じられて安心する。

 私はマグカップを持った手を太腿の上へ置き、おずおず隣の彼と目を合わせる。

「私たち……どんな夫婦になっていくんでしょう?」

 それは素朴な疑問だった。

 私は身の安全を保障してもらうために、そして、彼はお姉さんからのプレッシャーから解放されるために、遠慮なく言葉を交わせる相手である私との結婚を決めた。

 クルーとしての仲間意識やお互いの仕事に対する敬意は元々あるとはいえ、本来結婚する時に必要なはずの甘い感情は持ち合わせていない。

 そんな私たちが、いったいどんな結婚生活を送ることになるんだろうって。

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