拳にモノを言わせますけどよろしくて?
  ✻ ✻ ✻


 夜。リュティシアは寝室にやってきた愛する夫へ、眉尻を下げた。

「フェルさま……」
「そんなにしょげないでおくれリュティ。きっとエドゥアルドなら賢い王になる」
「そうですけど……」
「何が不安なんだい?」

 フェリスベルトは寝台に腰かけると妻の肩を抱く。そして唇を降らせた。髪に。まぶたに。頬に。

「んぁ、うふ」

 くすぐったくて嬉しくて懐柔されてしまいそう。愛に身を任せたくなるのをこらえ、リュティシアはぶぅ、と頬をふくらませた。

「〈育成〉への期待が嫌なんだもの……私、もっとのんびり暮らしたいと思っていましたのに!」
「こらリュティ」

 フェリスベルトは怒った顔をしてみせ、妻の唇をふさぐ。おしおきだ。笑ってもがくくせに力が抜けていくリュティシアを寝台へ押し倒して口説いた。

「リュティなら国も民も丸ごと育てていけるよ。私も一緒にやるから」
「ん」

 リュティシアはとろんと微笑む。もちろんこんな愚痴はフェリスベルトに甘えているだけだ。
 スリ、と胸へ顔を寄せる。なついてくる妻にフェリスベルトはささやいた。

「もうひとりかふたり、可愛い家族が増えたらのんびりなんてできないと思うが――欲しくないか?」

 リュティシアは体の奥がうずくのを感じた。二人の間に子ができたら――忙しくてもどんなにか幸せだろう。
 フェリスベルトが妻に子を産ませるのを怖れていたのはリュティシアも知っている。告白された。だが、二人にもう不安はない。

 だって王宮を蝕む呪いは消えた。
 ここにあるのは――愛だけ。だから大丈夫。

「フェルさま……」

 熱い吐息が交わされる。
 二人でいれば、これから何があろうと乗り越えていける気がした。



    了
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