この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「帆奈美ちゃんなら引き受けてくれると思ったの。やっぱり鳳麗歌劇団のチケットは最強だね」
 「……え?」

 今度は帆奈美が目を瞬かせる番だった。

 「あっ……」

 愛理が慌てて両手で口元を押さえる。しまったといった表情で視線を逸らした。

 「愛理」

 静かに名前を呼ぶと、愛理の肩がびくりと揺れた。
 責めるつもりはない。自分がまんまと誘導されたのかどうかをただ、たしかめたかっただけだ。

 愛理は気まずそうに視線を泳がせたまま、指先でナプキンの端をいじっている。さっきまでの無邪気な笑顔は影も形もなく、代わりに浮かんでいるのは叱られるのを待つ子どものような表情だった。
 怒っているというよりは、やっぱりと思ってしまった。

 あれほど貴重なチケットを、なんの見返りもなく譲ってくれるなんてできすぎていると思ったのだ。でも同時に、愛理なら本当に善意だけでそんなことをするかもしれないとも思っていた。
 その両方が正解だったのだろう。

 「最初から、そのつもりだったの?」

 責める響きにならないよう、できるだけ穏やかに問いかける。
 愛理はしばらく黙っていたが、やがて観念したように小さく頷いた。
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