この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 ラウンジスタッフが、ソファに座る男性のそばで足を止めた。
 いよいよ、ご対面。ゆっくりと息を吐く余裕もないまま、頭を下げた。

 「お、お待たせしました。……三木(みき)愛理(あいり)です」

 男性が立ち上がる気配がしたため帆奈美も顔を上げると、相手はそのまま見上げる格好になるほど背が高い。手足は長く、均整のとれた体型だ。

 「東城(とうじょう)宏臣(ひろおみ)です」

 通った鼻筋に涼しげな目元には薄らと笑みが浮かび、両サイドを短くしたサラサラの黒髪が爽やかさを印象づける。
 いかにも上質な仕立ての濃紺のスーツは、ドット柄のボルドーのネクタイが映え、容姿と相まって遠くからでも目を引きそうである。
 三十一歳で大企業のイケメン御曹司。そう事前に聞いていたが、帆奈美の想像を軽く超えていた。

 とはいえ、帆奈美の不動の心はまったく揺らがない。ただ単に造形の美しさに感心する程度だ。

 東城宏臣と名乗った彼が向かいのソファを手で示したため、ゆっくりと腰を下ろす。優雅な笑みを浮かべたつもりが、こういう場に不慣れなため唇の端が少々引きつった。

 「なににしますか? ここは豆にこだわったコーヒーがおいしいですよ」

 彼が向けてきたメニューをさっと見る。
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