この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「ちょっ、なんで!?」

 声が思いきり裏返った。宏臣だったのだ。口元には笑みを浮かべているが、お見合いのときのように目の奥は笑っていない。

 「偶然通りかかったら、愛理さんを見かけたので。メッセージのやり取りをしているときに出会うなんてドラマチックですね」

 ドラマチックというより最悪のタイミング。品のいいお嬢様を演じなくてはならないのに、間抜けにも口をパクパクとさせてしまった。

 「僕の会社、この近くなんですよ。愛理さんもですか? たしか輸入雑貨の店にお勤めだと」

 その通りだ。愛理は、彼女の叔母が営む輸入雑貨店で働いている。でも、その店はこの近くにはない。
 いかにもランチタイムにここで休憩していたふうの自分の様子を、どう誤魔化したらいいのか。愛理本人じゃないとバレるわけにはいかないというのに。衝撃的な事態にフリーズした脳を必死に働かせる。

 「あ、えっと……そのお店はこの辺じゃないんですけど、ちょっと用事があって足を運んで……」

 そうはぐらかす以外にない。愛理を思い浮かべてお嬢様ぶった微笑みをたたえたが、様になっているかは怪しい。

 「メッセージで話すより直のほうがいいのでよかったです」
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