この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 こっちはそうでもないんですがと心の中で毒づいていると、宏臣は拾い上げたスマートフォンを帆奈美に差し出してきた。
 すっかりその存在を忘れていたシロモノだ。

 「……ありがとう、ございます」

 とにかくなにからなにまで想定外のため、帆奈美の言葉は先ほどから〝……〟ばかりだ。たどたどしいにもほどがある。

 「今週の金曜日はいかがですか?」
 「え?」

 いきなり話を戻されて混乱する。

 「夕食でも一緒にしながら、結婚願望ゼロについてもっと深く話を聞かせてください」
 「そんなたいそうな話じゃありませんから」

 何度言ったらわかってくれるのだろう。御曹司という生き物は聞き分けがないのか、それとも理解力が低いのか。なにしろ、そういう人種とは関わった経験がないのでわからない。

 「たいそうかどうかは、聞いてみないとわかりません」

 さらりと返されて言葉に詰まる。
 宏臣は少しだけ身をかがめ、帆奈美の目を覗き込んだ。

 「それに、結婚願望がないと断言できる理由には、少し興味があります」

 やっぱり食いつくのか、と内心で叫ぶ。
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