この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「べつに大した理由じゃ――」
 「それでも構いませんよ。ただの好奇心ですから」

 遮るように言われた。
 にこやかな笑みを浮かべているが、どうにも引き下がる気配がない。むしろ、すでに決まっていることを確認しているような口ぶりだ。

 「金曜日の夜でしたね」
 「いえ、まだ決めてませんけど」
 「では決まりですね」
 「決まってません」

 即座に否定すると、宏臣はくすりと笑った。

 「そんなに警戒しなくても、食事をするだけですよ」

 そう言われると、断る理由が急になくなる。

 「それとも、僕とふたりで食事をするのは、そんなに嫌ですか?」

 わずかに首を傾げて、穏やかな声で続ける。
 不意打ちの問いに口を封じられた。
 嫌かどうかと言われれば――そこまででもない。

 (いやいやいや、そこ考えるところじゃないから!)

 慌てて思考を引き戻す。
 その一瞬の沈黙を、宏臣は見逃さなかった。

 「では、金曜日の七時に。お店はこちらで予約しておきます」

 静かに言いきる。

 「ちょっ――」
 「楽しみにしています、愛理さん」

 完全に話をまとめられてしまった。
 帆奈美は、ぽかんと口を開けたまま宏臣を見上げるしかなかった。

 (……なんで私、約束したことになってるの!?)

 気づけば話はきれいにまとまっていて、宏臣だけが余裕の笑みを浮かべていた。
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