この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「ええ。表向きは」
 「それで仕事が回るなら、安いものです。僕はただ、数字を少し気にする性分なだけですよ」

 宏臣は苦笑してカップをデスクに戻す。

 「その〝少し〟に、皆さん身構えるんです」
 「そうですか」

 宏臣は窓の外へ視線を向けた。高層ビル群の向こうに、午後の光がゆるく広がっている。

 「ですが、あの程度の計算もしてこないとは思いませんでした」

 ぼそりと漏らすと、日高が静かに頷く。

 「副社長の基準が高すぎるだけです」
 「それは困りましたね。僕としては、だいぶ甘くしているつもりなんですが」

 宏臣は軽く笑う。もっとも、心の中ではその程度の計算もできないのかと思っていたが。

 「ところで副社長、社長の奥様がお見合いはどうだったのかと気にされていらっしゃいました」

 日高は宏臣の母から絶大な信頼を寄せられている。宏臣の秘書というよりは、お目付け役と言ったほうが近いかもしれない。東城家の人間として道を外さないように。母の思惑通りに動くように見張る人間とでも言おうか。彼の父もまた、かつて宏臣の父の秘書を務めていた人物だった。

 日高のひと言で昼間偶然会った三木愛理のことを思い出した。
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