この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
事の発端は今から三週間ほど前に遡る。
ゴールデンウイークを目前に控えた日曜日の昼下がり、帆奈美は大学時代から仲良くしている友人、三木愛理に誘われてカフェへやって来た。コンクリートの床に観葉植物が点々と置かれた、都会的で落ち着いた空間は洗練された空気が漂っている。
テーブルに案内されるや否や、帆奈美は両手を胸の前で握った。
「愛理、昨日はほんっとうにありがとう。あんないい席で観られたのは初めてだし、チケット取れなかったから今回は諦めてたの。あ~本当によかった~」
ありったけの感謝を身振り手振りで伝える。そのときのことを思い返すと、うっとりとした表情になるのを止められない。
昨夜、帆奈美は鳳麗歌劇団の公演に足を運んでいた。いわゆる推し活である。大好きという言葉では片づけられないほどのめり込んでいる劇団なのだ。
世界でも珍しく、演者は女性だけ。大学生のときに伯母に連れて行かれ、たった一度で虜になった。ちょうど初めての恋に破れたタイミングでもあり、それ以来、恋愛はそっちのけでハマりにハマっている。
鳳麗歌劇団は人気スターの退団公演や話題作が重なると、ファンクラブでも落選が続くほど倍率が上がる。昨夜もそのひとつで、チケットが取れず落胆しているところだった。