この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
母から連絡が入ったのは、その四日後のこと。愛理との約束があるため、そろそろ副社長室を出ようとしていたタイミングだった。
宏臣はもちろん、日高からもこれといった具体的な報告がないため痺れを切らせたのだろう。
《ちょっと宏臣、なんの報告もないってどういうことなの? 日高に聞いても『問題ありません』としか言わないのよ。問題がないなら、普通はもう少し話が進んでいるはずでしょう?》
「問題がないなら、それでいいじゃないですか」
《あなたねぇ……》
電話の向こうで母が大袈裟にため息を漏らす。
《気に入らなかったのならそれでもいいのよ。今回はお相手から半ば強引に進められた話だし。それより、もっといい縁談があるのよ》
声を弾ませた母が口にしたのは、大物政治家の孫娘だった。政局との結びつきを強めるためのものだろう。
《とても聡明で評判のいいお嬢さんらしいの。今度こちらでお茶の席を設けようと思っているのよ》
母はすっかりその気で、相手の家柄や人柄を次々と並べ立てていく。
宏臣は片づけようとしていたデスクの書類に視線を落としたまま、適当に相槌を打った。
「そうですか」
《そうですか、じゃないわよ。ちゃんと聞いているの?》