この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「聞いていますが、先日のお見合い相手との約束がこのあとあるので」
 《え? まだ会うつもりなの? 気に入らなかったんじゃないの?》

 電話の向こうで、母の声の調子がわずかに変わる。

 「べつに嫌というわけでもありませんでしたから」

 宏臣は椅子の背にもたれたまま、腕時計にちらりと目を落とす。

 「では、そろそろ出ます」
 《ちょっと、まだ話は――》
 「続きはまた今度聞きます」

 そう言って通話を切った。
 スマートフォンをポケットにしまい、デスクの上の鍵を手に取る。
 政治家の孫娘だの縁談だのと、まだなにか言っていた気がするが、正直なところほとんど頭に入っていなかった。
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