この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
待ち合わせ場所は、都内の高級ホテル『ラ・ルーチェ』のレストランだった。
約束の時間より少し早めに着き、スタッフに案内された席に腰を下ろす。落ち着いた照明の下、静かなピアノの音が流れている。
宏臣はグラスの水に口をつけながら、店の入口へちらりと視線を向けた。
約束の時間になったが、愛理は現れない。
五分、十分、十五分。腕時計を確認してからスマートフォンを取り出し、彼女の連絡先をタップする。ところが、呼び出し音が数回鳴ったあと留守番電話に切り替わった。
小さく息を吐く。
(遅れる連絡くらいできる人間だと思っていたが……)
宏臣の認識が誤っていたか。会った印象からして、なにも言わずに約束を反故にするような女性には思えないが。
(もしかしたら、レストランの場所がわからないんじゃないか?)
そう考えて席を立つ。
レストランを出てエレベーターでロビー階へ降りると、広い吹き抜けの空間には宿泊客や待ち合わせの人々が行き交っている。
周囲を見回したそのときだった。
「大丈夫です、ゆっくりでいいですからね」