この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 だが、これまでの経験則から、こういう理由だとは想像もしなかった。
 彼女は老婦人の歩調に合わせて、急かすこともなく付き添っている。目立とうとする様子もなければ、誰かに見せるための振る舞いにも見えない。
 宏臣は目を細めた。

 ほどなくして、ラウンジの入口近くで若い女性が立ち上がる。

 「おばあちゃん!」

 駆け寄ってきた女性に老婦人が手を振る。

 「心配かけてごめんねえ。ちょっと転びそうになってしまってね。このお嬢さんが助けてくれたのよ」

 孫娘は何度も頭を下げた。

 「本当にありがとうございます」
 「いえ、大したことは……」

 愛理が恐縮して答えると、老婦人はふたりを見比べてにこにこと笑った。

 「それにしてもまあ、お似合いのご夫婦ねえ」
 「……え?」

 愛理が目を瞬かせる。
 宏臣も思わず眉を上げたが、否定するより先に老婦人は満足そうに頷いた。

 「優しそうな旦那さんでよかったわねえ」
 「あ、いえ、その……」
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