この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「なにか気になるものはありましたか。コース料理を予約していますが、ほかに食べたいものがあれば」
 「ええと、そうですね……」

 愛理は指先でメニューの一角を押さえた。

 「ステーキも食べたいです」

 宏臣は一瞬だけ沈黙した。

 「ステーキ、ですか」
 「はい。もう、ほんとにペコペコで」

 お腹を両手で押さえながら言って、ふと顔を上げて続ける。

 「……食べすぎですかね」

 真剣な顔だ。どうやら冗談ではないらしい。
 令嬢にしては、ずいぶんと率直だ。お見合い後の初めての食事で、女性から肉料理を頼むことはほとんどない。むしろ軽めのものを選ぶのが一般的だろう。
 さすがに面食らったが、そのくらいで戸惑う宏臣ではない。

 「いえ、むしろ安心しました」
 「……え?」

 愛理が目を瞬かせる。

 「先ほどまで、ずっと人を支えて歩いていたでしょう。お腹も空くはずです。遠慮して食べないほうが、よほど不自然ですよ。どうぞ、好きなものを」

 愛理はぽかんとした顔でこちらを見ていたが、やがて小さく笑った。
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