この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「公演の遠征とかもあるので、家を空けることも多いと思うんです」
 「遠征?」
 「はい。地方公演です。北海道とか九州とか。初日と千秋楽は絶対観たいので、休みを取って行くこともあります」
 「なるほど」

 宏臣は静かに頷いた。

 「スケジュールは推し中心になります」

 愛理はなぜか胸を張る。

 「それは大変だ」
 「ですよね」

 なぜか少し期待するような顔でこちらを見る。たぶん今のは、普通なら引くところだと言いたいのだろう。
 だが宏臣はワインをひと口飲んで続けた。

 「仕事でも趣味でも、そこまで夢中になれるものを持っている人は多くありません。愛理さんは素晴らしいと思いますよ」

 愛理が面食らったように完全に黙り込む。その沈黙のあと、彼女は小さく首を傾げた。

 「東城さんって、もしかして、あまり引かないタイプですか?」
 「どうでしょう。人によるのかもしれません」

 愛理が固まる。どうやら完全に想定外らしい。
 フォークを持ったまましばらく動かずにいたが、やがて小さく呟いた。
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