この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 思わず声が出た。

 「あら、じゃあ今回のお見合いはうまくいったのね」

 女性は一瞬だけ目を見開いたあと、くすっと楽しそうに笑う。

 (お見合いの件まで知っているって、どういう間柄なのかな……)

 下手に反応するわけにいかず、ふたりの様子を静観する。

 「まぁ、うまくいったというかなんというか」

 宏臣がどこか恨めしそうな目を送ってよこしたが、帆奈美は肩を竦ませて恐縮する以外にない。

 「だって、これまでまったく興味を示さなかった宏臣が、やっとここへ連れてきてくれたんだもの。うまくいったってことでしょう?」

 女性は意味ありげに言って、優しげに微笑んだ。

 (それにしても、いったい何人の女性とお見合いをしてきたんだろう。気に入ったと言われて悪い気はしないけど、きっと物珍しかっただけよね)

 育ちのいいお嬢様ばかりがお相手だったから、庶民の帆奈美が目新しいだけ。フルコースだって毎日では飽きてしまう。たまには納豆やおにぎりを食べたくなる原理である。

 「自己紹介が遅れちゃったけど、私はこの店のオーナー兼シェフで久保(くぼ)喜和子(きわこ)です。ちなみに宏臣の母親の妹よ」
< 81 / 172 >

この作品をシェア

pagetop