この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 親密そうなのも当然だ。

 「立原帆奈美と申します」
 「帆奈美さんね。よろしく」

 こちらこそと帆奈美も頭を下げたが、〝よろしく〟してしまっていいものか。

 「おばさんって呼ばれるのが嫌だから、宏臣には名前で呼んでもらってるの。だから帆奈美さんもそう呼んで」
 「は、はい……」
 「今夜はとびきりおいしいものを振る舞うわね」
 「よろしく、喜和子さん」

 宏臣に言われた喜和子は目だけで応えて、早速調理に取りかかった。カウンターの向こうで、手際よく食材を並べていく。

 大理石の上に置かれたのは見事な霜降りの牛肉に、艶やかな季節野菜。アスパラガスやズッキーニ、色鮮やかなパプリカに加え、小ぶりながら身の締まった魚介も用意されている。どれも新鮮で、見ているだけで質の良さが伝わってくる。

 鉄板に火が入るとじわりと熱が伝わり、やがて小気味いい音が響きはじめた。油が落ちる軽やかな音とともに、香ばしい香りがふわりと立ちのぼる。

 (……すごい)

 自然と視線が引き寄せられる。さっきまでの混乱も忘れてしまいそうになるくらい、その光景には引き込まれるものがあった。
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