この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 それ以上は語らないと決めた帆奈美の心情を悟ったのか、宏臣が気持ちを切り替えるよう諭して、少しだけ口元を緩める。
 その言葉に、張り詰めていたなにかが、ほんの少しだけほどけた気がした。

 最初に出されたのは、小さく切り分けられた前菜だった。
 軽く火を入れた白身魚に、やさしい味わいのソースが添えられている。

 「まずは軽いのから。胃に優しいから」

 宏臣が言う。

 「……気を使わせてすみません」
 「疲れてるやつに重いもの食べさせても意味ないだろ」

 あたり前のように言われて、言葉を失った。

 「その通りよ」

 くすっと笑いを含んだ声が、鉄板の向こうから挟まれる。
 顔を上げると、喜和子が手を動かしながらこちらを見ていた。

 「こういうときは、体にやさしいものから入れるのが一番。無理させてもおいしく食べられないもの。そうして労ったあとは元気が出るお肉をね」

 やわらかな口調に、どこか包み込まれるような安心感がある。
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