この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 「ありがとうございます」

 フォークを手に取り、ひと口運ぶ。口の中に広がるのは、想像していたよりもずっとやさしい味だった。

 (……なんか、ほっとする)

 自然と肩の力が抜けていく。
 その様子をちらりと見た喜和子は満足そうに目を細め、再び鉄板へと視線を戻した。

 「うまい?」

 宏臣が尋ねる。

 「はい」

 頷くと、宏臣は満足そうに小さく息をついた。
 しばらくは、鉄板の音と食事に集中する静かな時間が続いた。ときおり食材が焼ける軽やかな音が心地よく響く。無理に会話を続けようとしなくていい空気が、やさしく場を満たしている。
 気づけば、ぽつりと口を開いていた。

 「こういうの、慣れてなくて」
 「こういうの?」
 「人に気を使われるの」

 自分でも少し意外に思いながら、言葉を続ける。

 「だいたい、そっち側なので。私がやるほうというか。家でも妹がいるので、そういう役回りで」

 そこまで言って、はっとする。
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