この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 語尾が弱くなる。あのときの状況を思い出して、頭を抱えたくなった。

 《なにその自信のなさ》
 「だって全然引かないんだもんあの人。逆に距離詰めてくるし、逃げられると思うなとか言うし。なんか途中から〝俺〟とか言い出すし。普通に怖いの」
 《でも帆奈美ちゃん、今ちょっと楽しそう》
 「楽しくない!」

 反射的に否定してから、ぴたりと口を閉じる。自分でも、今の声のトーンにわずかな違和感を覚えた。

 (……あれ?)
 《帆奈美ちゃん、もしかしてさ》

 妙に含みのある声になる。

 《ちょっとだけ、嫌じゃなかったんじゃない?》

 言葉が喉の奥で詰まる。
 宏臣の声や言葉を思い返して、胸の奥がなんだか熱い。

 《で、これからどうするの?》
 「どうするもなにも、もう会わないよ。これ以上関わったら絶対まずい。愛理にも迷惑かかるし」
 《先に迷惑をかけたのは私だから、それは気にしないで。帆奈美ちゃんが少しでもいいなと思ってるなら、その気持ちに正直になったほうがいいと思う》
 「や、やだな、なに言うのよ」

 つい口ごもる。

 (正直になるってなに。そりゃ楽しかったけど……)

 今回はたまたまこんな展開になったけれど、普通に生活していたら自分とは永遠に関わることのない人だ。これ以上は近づかないほうがいい。
 そう思った瞬間、ひりっと胸の奥が痛んだ気がした。

 《ともかく頑張ってね、帆奈美ちゃん》

 なにを頑張るというのか。無責任な言葉を投げかけ、愛理は電話を切った。
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