目と口は同じぐらいにものを言う
「……ううん。どこにも行かなくていい」
「家でゴロゴロしたい感じ?もちろんいいよ」
「それもあるけど…その、」
柊斗はスプーンを置くと、緊張しているのを誤魔化すかのようにテーブルの上で小さく手を組んだ。そして、上目遣いで、じーっと私を見上げてくる。黒目がちで綺麗な彼の瞳が不安そうに、でも何かを強く期待するように揺れていた。
「……明日、どこも行かないで、お家で1日中イチャイチャしたいなーって…」
「……」
「ここ最近、千夏と全然ゆっくりできてなかったでしょ?俺、もう限界で。そのー…明日、千夏のこと、1日中独り占めしていい…です、か?」
語尾にいくにつれて、どんどん声が小さくなっていく。耳まで真っ赤に染めて、でも視線だけは外さずに私の目を見つめてくる。その姿は、お散歩をねだるのを必死に我慢できなくなった子犬そのものだった。
ずるい。本当にずるい。
柊斗は自分がどんな目で私を見つめれば、私が断れなくなるのかを完全に理解している。私を狂わせるその綺麗な瞳で、そんな可愛いおねだりをされて、首を横に振れるわけがないじゃないか。
「……分かった。じゃあ、明日は1歩も外に出ない日ね」
私が内心の狂喜乱舞を抑え込んで承諾すると、柊斗の瞳がまた輝いた。
ああ、本当に見ていて飽きない瞳だ。
「本当!? やったー!」
嬉しさのあまりテーブルを挟んで身を乗り出してきた柊斗を「落ち着きなさい、まだご飯の途中」といつもの調子でいなす。けれど、私の心臓も、彼の視線のおかげでさっきから少しだけうるさく脈打っていた。