ただいま緊急で婚約破棄を望んでいます!
 だって、ここで大人しく帰されても、ローゼンクイン公爵邸でぽっくりと死んでしまうだけなのだ。

 そんな人生の終わり方、絶対に嫌!

「もし……命が危なくなるような、悪質な嫌がらせもしていても?」

「何。一体……何をしたんだ? 聞こう」

 そこで、クリス様は真剣な表情になっていた。私に対する軽蔑などは含んでいなくて、純粋に何をしたのかという話に興味があるように見える。

 顔を近づけられて、私の身体は自然と後ずさった。近い近い。ええ。私たち男女ではありますけど、確かに婚約者同士ですけどね!

 王子様らしい美麗なお顔の攻撃力が高すぎて、近いととても平静では居られないのよ。

「っ……私はこの前、偶然を装って、セイラ様を階段から突き落とそうとしました!」

 そうなのだ。私は悪役令嬢らしく、定番の嫌がらせだって、既に行っている。アンネローゼがどれだけクリス様のことを好きであるか、これでわかろうというものだ。

「それで、彼女は階段から落ちたのか?」

「いえ。通りがかりの騎士にすんでのところを助けて貰ってました」

 なんだそんなことかと言わんばかりに、クリス様は小さく息をついた。
< 11 / 26 >

この作品をシェア

pagetop