ただいま緊急で婚約破棄を望んでいます!
 クリス様はまだ未婚の私の立場でここで居ることで生まれる誤解を思いやってか、時計を見てからそう言った。

 ……今日でないと、私の命が! と、叫びそうになりながらも、私ははっと思いとどまった。

 だって、あの黒衣の男が言うには、ここでクリス様に事情を話しても、私の命が落ちてしまうのだ。

 それに、ここまで言ったら何かあるかもしれない……と思うのは、普通のことなのに、頑なに婚約破棄してくれない。

 感情が昂ぶった私はなんだか、だんだんと泣きそうになって来た。

 なんて、わからず屋なの!

 ここまでして婚約破棄欲しいって、頼んでいるのに。『断る』の一点張りで……もー!! 頑固なんだから!

「クリス様! もう……お願いですから、私と婚約破棄してください!」

「……おい、泣きそうな顔で何を言ってるんだ。とにかく、言いたいことがあれば、また時間を取って聞くから、今日は勘弁してくれ」

 クリス様は困ったように微笑み、私の背中を落ち着かせるように撫でた。

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