ただいま緊急で婚約破棄を望んでいます!
 零時十分前なら、誰と何をしていようが乱入していたかもしれないけれど……とにかく、先触れもなく予定もなく夜に会いに来た私の方がかなりおかしな行動をしているのだから、クリス様にご迷惑を掛けることは慎まなくては……。

 それに悪事を白状して『お前とは婚約破棄だ』と、言ってもらったら良いのよ。私だって、悪役令嬢をしていたんだから、それなりにヒロインを虐めていたんだから……!

 自分にはそう言い聞かせつつも、時間は過ぎゆき、気が付けば三十分前になっていた。

 駄目。生命の危機。

 私はとにかくクリス様に会おうと意を決して立ち上がりかけたところで……ようやく扉が開いた。

「……アンネローゼ。悪い。外交官と会っていたんだ。君が緊急で来ていると聞いていたので、なるべく早めに切り上げたんだが……」

 室内でもきらめく金髪に、清水を思わせる美しい青色の瞳。美麗な容姿を持つこのお方が、王太子クリストファー・ジェデオン殿下。

 ゲーム画面だと落ち着いてまぁ美形だわ程度だけど、こうして、直接目にすると目に衝撃を感じたかと思うほどに整った容姿をしているわ。

「クリス様……あの」

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