一番星にキスをする
* * * *

 あの修の宣言から三日。彼のことを友達以上に見るなんて出来るはずがないと思っていた聖は、自分のことが信じられなかった。

 そして修が若くて可愛い女性社員と話してい
ると、何故か心がムカムカしてきて、平常心ではいられなかった。

(本気で落とすって言ったくせに、あれから何もしてこないし……いや、まだ三日しかたってないけど──って、別に期待してるわけじゃないんだから!)

 彼の行動にいちいち振り回されていることに気付いて、途端に心がモヤモヤし始める。

 同期は同期だと言い切ったはずなのに、修のことを見るたびに動悸が激しくなっていく。

 修の服越しに、手のひらにあの時触れた筋肉の感触を思い出して息苦しくなるのを感じていた。

「友達と恋人の境界線ってなんだろう」

 同じ課の同期である美穂と食堂でランチをしながら、聖はポツリと呟いた。

「いきなりどうしたの?」
「んー、なんとなく。久しく恋愛をしていないと、友達の好きと、恋人の好きの違いがわからなくて。どちらも大好きな人であることに変わりはないでしょ?」

 美穂は上を向いてしばらく考えてから、口元に手を当て、「エッチなことがしたくなるのが恋人とか?」と聖の耳元で囁く。

「でもそれなら"セフレ"と同じ枠じゃない?」
「あっ、確かに。それなら……わがままが言えちゃうっていうのはどうかな?」
「わがまま?」

 聖は首を傾げた。

「そうそう。友達には言わないけど、彼氏には言っちゃう甘えたさんなわがままのこと」

 さらに首をかしげた聖に、美穂は眉を八の字にして唇を尖らせ、「例えば、『もっと一緒にいたいから帰りたくない』」と上目遣いで言ったのだ。

 そのあまりの可愛いさに、聖は美穂の手を握りしめ、「も、もちろんいいよ!」と鼻息を荒くする。

 しかし美穂は苦笑しながら天を仰いだ。

「じゃなくて、こんなふうにちょっとわがままなことを言ったり、逆にわがままが許せたり。それが可愛いって思えるのも、好きな人ならではじゃない?」

 言われてみれば、確かにそんな気がしてくる。

「さすが美穂。彼氏が途切れない理由がわかる気がする」

 二人が出会ったのは入社してすぐだったが、その頃にはすでに恋人がいた。それからしばらくして、すれ違いによる破局を迎えたが、一ヶ月も経たないうちに新しい恋人が出来ていた。

 どちらかといえば可愛いに属する美穂は、いつも髪には気を遣っているらしく、さらさらのストレートの黒髪がきれいになびく。

 元々ズボラだった聖は、美穂から多くのことを学び、今はそれなりに自分に対してお金をかけるようにもなっていた。

 そして美穂は入社三年目にして、社内社外合わせて四人の人と元カレがいるのを聖は知っている。
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