色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~
「あの、本当ですか?」
 目をそらすということは、多少何かあるということだ。
 太陽様はチラリとこっちを見て、うつむいた。
「すんません。本当は一つだけ嘘ついてます」
「やっぱり。叔母のこと…」
「いえ…エアー先生のことは本当に・・・いや、ただ。俺、どうしてもエアー先生。あ、すんません。シナモンさんもですよ。いや、そうっすよね。一番の被害者はそもそもシナモンさんなわけで。連れ去られて怖い思いしたわけで」
「・・・・・・」
 呆れて何も言えなかった。
 シナモンは連れ去られてなどいない。
 間一髪で隠れたから、そもそも被害にもあっていない。
 それどころか、うちに侵入した悪党どもを尾行するという、とんでもないことをやってのけた子だ。
 どうやら、太陽様はシナモンが誘拐されたと思い込んでいるらしい。
「太陽様。やっぱり今でも叔母のことを?」
「いえ、そうじゃなくて。俺のせいじゃないっすか。だから、祖国に帰った後、どうしているか気になって。バニラさんに一度だけ訊いたんです。エアー先生とシナモンさんはどうしているかって」
「バニラに?」
「バニラさんとシナモンさんが姉妹っていうのは本当に驚きっすけど。こういうときは姉妹でいてくれてありがたいっすよね」
 バニラとシナモンも同一人物なんだけどね…。
「バニラさん、エアー先生とシナモンさんは祖国に戻って元気に暮らしてるって言ってました。先生はピアノを弾き続けて、シナモンさんは侍女の仕事してるって」
「・・・・・・」
「だけど2人とも、俺のこと心配してくれてるって言ってました。悪いのは俺なのに。みんな、優しすぎますよ」
「いやいやいや…優しいのは太陽様ですよ」
 どれだけのお人好しなのだろう。
 そして、すべてが嘘で固められたストーリーだ。
 この人は本当に相手を疑わない人だ。

 軽く頭をおさえる。
 すっかりと辺りは暗くなってきていた。
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