あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 父は定期的に領内を見回り、様々な人の話を聞いていた。畑で働いている農民、鍛冶職人、領内で小さな店舗を経営している商人、子供を育てている母親など、それはもうありとあらゆる人の話を。
 仕事の手を留めさせてしまった代償として、少々礼金を渡すこともしていたから、父に話しかけられて嫌な顔をする者もいなかった。そもそも領主相手に嫌な顔をする人は少数派だろうけれど。
 だが、そういった人の日常生活の中には、領主の家では思いもつかないような問題が発生していることもあった。
 生家が小さな領地ながらも、大きな問題を起こさずにすんでいるのは、父の地道な努力も役立っているのだろう。

(さすがに、辺境伯様に領地を回っていろいろな人の話を聞いてとお願いするのも難しいだろうし……)

 問題を抱えている人に集まってもらい、皆で手分けをして話を聞く。たとえば、仕事を求めている人と、働き手を探している双方がいるならば仕事の斡旋ができるかもしれない。
 住居を探している人と、空き家を貸したい人を引き合わせられれば、そこでもまた一つ問題が解決するわけだ。

「……悪くないな」
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