あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 一時間ほど経った頃、エルニーナはそっと席を立った。

「ちょっと外の空気を吸ってくる」
「ん、いってらっしゃい」

 ソリンがひらひらと手を振った。いつの間にか、セヴェロは隣のテーブルに移動していた。役人達にジョッキを渡し、混ざってわいわいとやっている。
 コルネリオは飲み過ぎたのかうとうととし始めていて、ソリンはセヴェロの席に異動してきた役人となにやら話し合っていた。
 酒場の外に出ると、夜風が頬に当たった。
 辺境の夜は、王都よりもずっと空気が冷たい。だが、その冷たさが酒で火照った身体には心地よかった。
 見上げると、星が降るようだった。王都では見えなかった無数の星が、空いっぱいに瞬いている。

(……来てよかった)

 左遷だと思っていた。ステファノに追い出されて、辺境に送られて。辺境伯領から生家に帰るのは大変だし、ここまでの道中、退職を考えなかったと言えば嘘になる。
 でも、ここでの仕事は充実している。少しずつ、辺境伯領が変わっていくのを見ているのは楽しい。

「風にあたっていたか」

 背後から声がして振り返ると、ドラヴェンが立っている。
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