あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 酒場の灯りを背にして立つ彼の表情はよく見えないが、声は穏やかだった。

「すみません、席を外してしまって」
「いや。少し、話がしたくて俺も出てきたんだ」

 ドラヴェンは、エルニーナの隣に並んだ。同じように空を見上げている。

「エルニーナ嬢には感謝しなくては。相談会も……助かった」
「皆が力を合わせたからですよ。辺境伯領の皆さんも」
「そうだな」

 彼の声は、いつもと変わらないように思えたけれど、その奥底に温かいものが流れているとエルニーナは知っている。

「エルニーナ嬢が来てから、この土地は変わった。俺一人では、こうはならなかっただろう」
「辺境伯様……」
「感謝している」

 その言葉に、目の奥がじわりと熱くなるのを感じた。

(……だめ、泣きそう)

 王宮で二年間、誰にも認めてもらえなかった。いい仕事をしても、それは上司の手柄になった。失敗は押しつけられ、提案は無視された。
 新しい場所に移動して、そこで成果を出したつもりが、そこからも追い出されてこの地に来た。

「……こちらこそ、ありがとうございます」

< 132 / 272 >

この作品をシェア

pagetop