あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 もう夕方近かったが、慌ただしく準備が始められ、翌日日の出の頃には辺境伯家の前にそりが並べられていた。
 雪竜達は、ゆったりと尾を振り、雪の中を出かけられるのを楽しんでいるようにも思える。

「辺境伯様、ジャイルさんがこちらを、と」
「ああ、助かる。全員分あるか?」
「もちろん」

 エルニーナも見送りに出ようとしたら、ジャイルから温めた懐炉を渡された。
 今日出かける者は、辺境伯領の騎士達の中でも寒さに強い者だそうだが、身体を温めるものはどれだけあってもいい。
 集まった騎士達も皆、しっかりと防寒していた。彼らがまとう騎士服は、雪の中で魔物討伐を行わねばならない時に身に着けるもの。
 耐寒効果があるため、普通の服よりもずっと寒い中でも動けるらしい。それからその上には、魔物の毛皮で作ったコート。こちらは風の影響を受けにくくなる効果があるそうだ。
 コートの襟は高く、顎の下までふさふさとした毛皮が続いている。喉から冷気が入らないように工夫されているようだ。
 そんな彼らでも、懐炉があればより快適に進めるはずだ。
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