あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 雪竜は五頭、それからそれぞれの後ろにはそりが二連でつけられている。できるだけたくさんの荷物を運べるように、だ。
 ちらりと役所の方に目をやれば、窓から心配そうにこちらを見ている人達が見えた。二階と三階の窓から見送っているのは、避難民達だ。
 彼らも、ドラヴェン達が無事に戻ってくるように祈っているのだろうか。

「……お帰りをお待ちしています」

 言いたかったことはたくさんあるはずなのに、それしか出てこなかった。

「任せろ。明日の夕方には戻る」

 エルニーナは、黙ってうなずく。

「皆も、頼んだ」

 片手を上げたドラヴェンは、身軽な動作でそりに乗り込んだ。
 一歩、雪竜が踏み出した。ぎしりと音がしたかと思うと、そりがゆっくりと動き始める。もう一歩進む。すると、勢いづいたかのように雪竜は速度を上げ始めた。
 馬車と同じぐらいの速度は出ているのではないだろうか。ドラヴェンの乗ったそりを先頭に、騎士が御者を務めるそりが続いていく。
 最後のそりが見えなくなるまで、エルニーナはその場に立って見送った。大丈夫、彼らは絶対に戻ってくる。そう自分に言い聞かせる。

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