あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
(どうか、無事に……)

 祈りを捧げながら仕事に戻る。
 だが、エルニーナの祈りは、天には届かなかったようだ。その日、一行は戻ってこなかった。
 またもや眠れぬ夜を過ごし、彼らが出発してから三日目。

「……エルニーナさん、ここ、数字間違ってる」
「ごめんなさい、私ったら」

 風邪をひいている避難民がずいぶん増えてきたので、倉庫から薬を運ばなければならないとセヴェロから説明を受けているところだった。
 残る薬の量から、いつまでもつかを計算していたのだが、思いきり間違えていた。これでは、今のペースで消費しても、夏まで薬がもつ計算になってしまう。

「大丈夫、辺境伯様は無事にお戻りになるよ」
「それは信じているんだけど……」

 エルニーナの顔に浮かぶのは苦い笑み。
 ドラヴェンが強いというのは、ここに来てから充分理解したつもりだった。
 でも、自然を相手にした時、どこまで彼の力が通じるかもわからないような気がしてくる。
 大丈夫、無事に戻ってくる。彼は強い、彼ならば大丈夫。
 自分に言い聞かせる言葉が、こんなにも響かないのも初めての経験だった。
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