あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「もー! ぼっちゃんはやめてよね!」

 セヴェロもすっかり子供に返ってしまっている。
 けれど、エルニーナは彼らの再会に注意を払っている余裕はなかった。彼女の目は、まっすぐにドラヴェンに注がれている。

(怪我はない、元気そう、顔色もいい)

 しっかりと防寒をして元気に帰ってきてくれた。それだけで、胸がいっぱいだ。
 そっとソリンが背中を押したのは、気のせいだろうか。
 一歩進んだら止まらなかった。
 そのまま走って行って、ドラヴェンの胸に飛び込む。

「お帰りなさいませ!」

 よかった。無事だった。誰一人欠けずに戻ってきた。
 少し湿った毛皮のコートが頬に触れる。だが、その感触さえも、彼の無事を伝えてくれているようだった。
 背中に、彼の腕が回される。しっかりと抱きしめられた。

「ああ、無事に戻ってきた。全員、無事だ。ところで、エルニーナ嬢」
「……なんでしょう?」
「……失礼した」

 そっと背中に回された腕が解かれていく。

「いえ、こちらこそ失礼しました!」

 今の今まで気づかなかった。自分から彼に抱き着いてしまったことに。

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