あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 辺境伯領の運営に必要と思われるありとあらゆる書類が用意され、種類ごとに箱に入れられ、テーブルに置かれている。
 ペンも紙もそれ以外の筆記用具も、必要そうなものは全部用意した。

「……ふむ。まあ、いいだろう。現地を私自身の目で確認することもあるが、その時には護衛を同行させる」

 道中には盗賊や魔物が出没する可能性もあるため、ステファノは王国騎士団の騎士を護衛として伴っていた。

「それはもちろん構わないが、屋敷の中も同行させるのか?」

 ステファノの背後には、護衛の騎士が二人立っている。辺境伯であるドラヴェンでさえ、屋敷の中では護衛なんてつけないのに。

「ここは王都と違うからな。私の身の安全を陛下は願っておいでだ」

 当たり前のような顔をして、ステファノは返す。エルニーナはむっとした。

(……ここが敵地だって言いたいのかしら)

 ドラヴェンの背後に控え、二人の会話を聞いていたエルニーナは、ステファノからは見えないように俯いてから、口角を下げた。

「夕食は食堂に用意させ――」
「いや、ここで食べる。運んでくれ――監査する側は、歓待されるわけにはいかないのだ」
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