あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「……はい」

 エルニーナはうつむいた。
 いったい、何をしていたのだろう。ステファノが来ると聞いた時に、書類はもう一度確認した。なに一つ抜け落ちていないと思っていたのに、こんなことになるなんて。

「君の小遣い稼ぎではなかったと――だが、越権行為ではないのかね?」
「許可はいただいております」

 たしかに許可はもらっていたが――それを証明するための署名を貰い忘れている。
 前後の記録ではきちんと署名をもらっているから見れば判断できるだろうが、それがまかり通っては、行政はぐちゃぐちゃになってしまう。

「まあ、これについては後ほど辺境伯に確認しよう。本来やるべきことをやっていないのは、彼の怠慢と言えなくもないからな。辺境伯としての資質を疑わざるを得ない」

 反論しかけて、ぐっと手を握りこむ。爪が手のひらに食い込んで訴えかけてくる痛みが、エルニーナを冷静にさせた。
 ここでステファノに食って掛かったところで、ろくな結果にならないのは目に見えている。

「ああ、そうだ。セヴェロ・アルジェンタを呼んでくれ。君が立ち会うといい」
「承知いたしました」

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