あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「……そうですか」

 先代の約束を盾に、今後も辺境伯領は独自の運用を続けていくと主張していくこともできる。だが、ドラヴェンはその道を選ばなかった。

「次の監査の時には、もっと楽に確認してもらえると思う。その旨、俺も一筆認めておこう」
「はい」
「それと、倉庫から食料品だけは出させてもらったぞ。民を飢えさせるわけにはいかないからな。慈悲深い兄上ならば、その点はご理解いただけると確信している」

 今ドラヴェンは、必要以上に『慈悲深い』を強調してはいなかったか。少なくとも、エルニーナの耳にはそう聞こえた。
 ステファノの耳にも、エルニーナと同じように響いたらしい。唇を引き結んで、不機嫌な表情になりかけている。
 はっと気づいた様子で、慌ててにこやかな笑みを作ったが。

「そうですな、食料だけは私も持ち出しを認めるべきでした――できれば、こちらにご連絡いただきたかったですがよしとしましょう」
「兄上には手紙を出した。ステファノの監査は完璧だったと誉めておいたぞ。こちらからの報告書も同封しておいた。ちゃんと正式のルートで出したから安心するといい」

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