あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 だが、今回は早めに文官を異動させたいという先方の思惑、さっさとエルニーナを人事部から追い出したいというステファノの思惑が一致したために、一週間での異動となった。

(この一週間大忙しだったわ……!)

 ステファノはエルニーナの仕事に引き継ぎなんて必要ないと思っていたようだが、エルニーナにだって抱えている仕事ぐらいある。
 そのため、この一週間は大急ぎで後任者のための資料を作成し、できる限りその場で説明するのに忙しかった。わからなかったら騎士団の事務所まで来るようにと、あとのことに気を配るのも忘れていない。
 そして、新しい部署に配属になったその当日のこと。

「エルニーナ・ヴァレスクと申します。よろしくお願いします」
「ティベル・ロッカ――申請する支給品の数を洗い出したいんだ。手伝ってくれないか」

 肩まである赤い髪を首の後ろで一本に束ねたティベルは、困ったような笑みを浮かべてエルニーナを出迎えた。青い目には、申し訳なさそうな光が浮かんでいる。

「かしこまりました」

 騎士団長ティベルの部屋は、書類の海と化していた。書類の山ではない。海である。
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