あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 その努力を、ステファノは無駄にしたのだ。踏みにじったと言ってもいい。
 身体が震える。
 これが、怒りなのか悲しみなのか、それとも別の感情かすらわからなかった。

「セヴェロ、物資は用意できるか?」
「もう、雪竜車に積ませてますよ。辺境伯様もお出になると思ったので。僕の判断で用意しましたが、すぐに第二陣が出られるようにします」
「医薬品も充分用意してくれ。頼む」

 ドラヴェン自ら救出に動いてくれるようだ。

(あの人は、戻ることを諦めていない)

 ティベルは、何か大きな権力が背後にあることを考慮していた。しかもその手が、辺境伯領に回っていることも想定していた。
 だから、エルニーナ個人への手紙にドラヴェンへの手紙を同封したのだろう。

「俺も準備にかかる。手当を受け、今はゆっくりと休んでくれ。騎士団の寮に部屋を用意させる」

 立ち上がったドラヴェンは、急ぎ足に部屋を出て行った。それに続くように、セヴェロが怪我をした騎士を案内していく。

(……私は、何もできなかった!)

 茫然とそれを見送っていたエルニーナは、部屋から飛び出した。
 どこでもいい。誰もいない場所に行きたい。
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