あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 ボタンを留めていた手を、壁に叩きつけた。物にあたるなんてめったにないのに、今回ばかりは怒りをどこに持っていったらいいのかわからない。

(違う、俺の責任じゃないのか……?)

 もっと強く警告すべきではなかっただろうか。王都まで直接話に行けば、マクシムだって取り合わないわけにはいかなかったかもしれない。
 国王から余計な疑いをかけられるのは面倒だからと、辺境から滅多に出ることのない生活だった。
 王都の問題から、国全体の問題から、目を背けていたのではないだろうか。自分は辺境伯だから、辺境にさえ気を配っていればいいと言い訳をして。


 ドラヴェンが装備を終えて出た時には、辺境伯領の騎士達が勢ぞろいしていた。雪竜が引く雪竜車には、物資の積み込みも終わっている。

「辺境伯様、こちらのことは私達にお任せください。コルネリオさんとジャイルさんにわからないことは確認しますし」

 エルニーナは、マクシム騎士団の騎士達と一緒に働いていた時期がある。だから、彼らが心配なのだろう。洗面し、化粧も直したようだが、明らかに泣いた形跡が残っている。
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