あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 この地に来た頃は、窓の向こうには庭園、さらにその向こうにはまだ開拓されていない地が広がっていた。
 だが、今は違う。今は集合住宅を新たに建築しているところ。倉庫もこれから新たに建てる予定だ。
 いつの間にか、この地がこんなにも大切になっている。この地を、国王の好きにさせてたまるものか。

(……私は、負けないわ)

 エルニーナに何ができるのかまだわからない。けれど、この地を守るためならばなんでもできる。いや、やらねばならない。


 ◇ ◇ ◇



 兄からの手紙が届いた夜、ドラヴェンは一人執務室に残っていた。あの日、兄に送った手紙の写しを見つめる。
 もし、兄がこの忠告を受け入れてくれたなら。マクシム騎士団はあんなに大きな被害を出さずにすんだだろう。

「旦那様、そろそろお休みになってはいかがですか?」

 そっと扉を開いたジャイルが、そう声をかけてくる。
 ドラヴェンがこの屋敷で暮らすようになった頃から働いているジャイルは、ドラヴェンにとってはもう一人の養父のようなものだった。
 執事らしく物腰は穏やかだが、その奥には、一番大切なものだけは譲らないという信念が宿っている。
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