あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 雪竜車は、少しずつ王都に近づいていく。
 街道沿いの景色は、見慣れたものへと変わっていた。王都に向かって荷を運んでいく商人達。逆に王都での仕入れを終えて戻っていく荷馬車。
 時々、雪竜を見た人達が、ぎょっとしている様子が伝わってくる。エルニーナも辺境伯領に行くまで見たことのなかった魔物だ。王都近郊では、なじみのない魔物に違いない。
 行き交うのは、仕事を求めて王都に向かう者、観光客、街道から少し離れたところで薬草を探す薬師。エルニーナが出発した頃と、まったく変わっていない。

「王都が見えてきましたね」

 窓の外に目をやったエルニーナの声は、自分でも驚くほどに落ち着いていた。

「緊張しているか?」
「そうかもしれませんね」

 同乗していたドラヴェンに声をかけられて、口元に笑みを浮かべる。
 落ち着いているのは事実だが、緊張しているのも否定できない。ドラヴェンに向けた笑みが強張っているのがその証拠だ。

「実を言うと俺もだ。王都に戻るのは、十年ぶり……だったか。あの頃とは、ずいぶん景色が変わっているのだな」

< 241 / 272 >

この作品をシェア

pagetop