あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 一礼した侍従が出て行こうとするのを、呼び止めた。

「謁見まではまだ時間があるだろう。茶を飲んだら仮眠をする」
「かしこまりました」

 謁見の前にある程度時間がかかるのは当然だ。たとえ、王弟かつ辺境伯であったとしても。
 個人的な呼び出しならばともかく、兄との間に私的な関係はまったくない。
 丁寧に一礼すると、侍従は扉から出ていった。そっとしておいてほしいという意思表示はできたようだ。
 視線だけで侍従を見送ると、扉の向こうには騎士が立っている気配がある。

(……やはりな)

 ドラヴェンが、王宮内の貴族と会話をするのを防ぎたいのだろう。エルニーナには言わなかったが、辺境伯の屋敷にも見張りがついていた。
 頃合いを見計らって、立ち上がる。目の前で毒見はしていたが、カップには手をつけない。
 窓に歩み寄り、外を確認する。
 十年前に王都を去ったとはいえ、ドラヴェンはここで生まれ育った。養子に出されるまでの幼い年月、この王宮の隅から隅まで遊び場だった。
 それから、内側から扉の鍵をかけてしまう。十分足らずでいい。外の騎士に室内に入ってきてほしくなかった。
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