あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 どう返すべきか、一瞬迷った。だが、周囲に他の者の気配はない。目の前の少年が何か企んでいたところで、すぐに取り押さえられる。
 ただ、黙って首肯した。

「よかった。どうやってこれをお届けしたらいいのか、困ってたんです」
「お前は?」

 いきなり目の前で、少年は騎士服の前を大きく開いた。身体にぐるぐると巻きつけられた布。その布を外すと、その下からいくかの綴じられた紙の束が出てくる。
『遠征記録(第一回)』、『医薬品発注記録』、『武器管理台帳』、『引継ぎ資料』と厚紙で造られた表紙には記されていた。少し縦長の細い字。見たことのない字だ。

「昨日、辺境伯様が来たらご案内するよう団長から命令があったんですよ。そしたらさっき、変なやつらが来たんで……」

 機転を利かせて、隠しておいてくれたらしい。

「やるな」
「エルニーナ嬢には、ずいぶん世話になりました。彼女が毒消しを持たせてくれたおかげで、生きて戻ることができたんですよ」

 にこにことしている少年の顔に、邪気はまったく感じられなかった。心からエルニーナに感謝しているらしい。

「助かった。捜す手間が省けた」

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