あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 彼が気をきかせて隠しておいてくれなかったら、騎士団長室で探さなければならなかった。

「お気をつけて。僕、今日はここで留守番なので」

 ご武運をと言ってくれた少年に笑みを返し、素早く騎士団の建物から滑り出る。
 滑るようにして来た道を戻り、控室の窓枠に手をかけ、身を引き上げる。
 ソファに身を落ち着けてから、受け渡された資料を開いた。
 中には、エルニーナの見慣れた字が並んでいる。
 騎士団員の特技に関する一覧、魔物の出没傾向を時期ごと、地域ごとにまとめた地図、補給計画の立て方、武器管理の手順。それから、後任者へのメモ書き。
『この資料が少しでもお役に立てれば幸いです。わからないことがありましたら、辺境伯領までお手紙をください。――エルニーナ・ヴァレスク』

 本来、引き継ぎでここまでする必要はなかったのに。
 エルニーナの書いた補給計画の後ろには、ティベルがエルニーナの資料を基に立てた補給計画も挟まれていた。それから、ステファノが立てた補給計画も。どちらも署名入りで、ステファノの立てた計画が過ちだったことが証明できる。
 カーテンを引くと、ドラヴェンはソファに身を横たえた。
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