あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 きぃきぃとわめく声に、集まっている貴族達の間にも動揺する気配が広がっていった。

「どういうことなの……?」
「今年も、繁殖期の魔物は無事に抑えられたと聞いたぞ」
「失敗したというのなら、王都にも魔物が押し寄せてくるのではないか?」

 貴族達の間からも不安の声があがっている。
 マクシムは、それを聞いて声を張りあげた。

「……皆の者! 落ち着け! 魔物は、辺境伯家の騎士達が討伐したそうだ。だが、今回の遠征、失敗したのはこの者――エルニーナ・ヴァレスクに責任がある!」

 王としての威厳を装った声で、マクシムは王笏をエルニーナに突きつけた。
 エルニーナは、ゆっくりと口角を上げた。
 この王は、知らない。
 ティベルがどんな覚悟で騎士達を率いていたのか。
 エルニーナが、どんな思いで一人一人の騎士の適性を見極め、ティベルに伝えていたのか。
 ステファノがそれを踏みにじったことも、騎士達がどれほどの犠牲を払ったのかも。
 知らないまま、自分から知ろうとせずに、すべてをエルニーナ一人に押しつけようとしている。

(……この人は、何も見えていない)

< 258 / 272 >

この作品をシェア

pagetop