あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 王宮で無力だった日々。辺境伯領で学んだこと。仲間と共に積み上げてきたもの。
 すべてが、この瞬間のためにあったのだとは言わない。でも、すべてがあったからこそ、今、ここに立っていられる。

「お、お前達! 私に逆らおうというのか! 捕らえよ!」

 なおもマクシムは声をあげるものの、貴族達は右往左往するばかりで役には立たない。
 そして、その瞬間。
 広間の扉が大きく開け放たれた。
 集まっている人々の合間を縫って、ゆっくりとエルニーナの方に歩いてくる足音。
 コツコツと広間を進むその足音に、マクシムは目を大きく見開いたまま動けなくなっていた。
 黒い髪、黒い目。辺境伯の正装をまとった長身の男が、真っ直ぐにエルニーナの元へと歩いてくる。
 彼の後ろには、辺境伯家の騎士達が続いていた。
 ドラヴェン・フロンテレスク。
 辺境伯にして、国王の弟。

「ま、まだお前を呼んではいないぞ!」

 マクシムの声は裏返っていた。今まで、エルニーナ相手にわめいていたのもなかったことになっているかのようだ。

「……呼び出しを待っていたら、その前にエルニーナ嬢に害を与えられそうだったからな」
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