あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 望まなかった椅子を自ら掴み取ってしまった彼は、即位の日も渋い顔をしていた。共に働くようになってから、彼の眉間の皺は見慣れてしまった気がする。

「……国王には向いてないんだが」
「それを言ったら、私だって向いていないと思いますよ。王妃なんて」

 即位式の朝、支度を手伝いながらエルニーナはくすりと笑った。
 彼の正装の襟を正し、外套の留め具を確認する。辺境伯家の紋章ではなく、王家の紋章が刻まれた新しい留め具だ。

「でも、求婚していただきましたからね。頑張ります」

 本来、エルニーナがドラヴェンに嫁ぐことはなかっただろう。国王の弟であり、辺境伯家の当主である彼に対して、エルニーナは男爵家の娘だ。
 だが、彼は王妃としてエルニーナを望んでくれた。
 たしかに、エルニーナが彼の側にいれば、最適な人事を行えるだろう。もっとも、エルニーナにわかるのはそれだけだ。
 あとは、数字。数字を合わせるのは得意だ。
 鏡の前で、ドラヴェンはじっと自分の顔を見つめていた。

「……似合わないだろう」
「いいえ。とてもよくお似合いです」
「お世辞はいい」
「お世辞ではありませんよ」

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