あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「……引き受けてしまったものはしかたないな。途中で投げ出すのも腹立たしい」
「そういうことですよ」

 ちらりと鏡に目を向けたエルニーナは、頭上を確認しようとしてぎゅっと目を閉じた。
 なぜ、こんな能力が身に付いてしまったのか、理由はきっと生涯わからないままだろう。けれど、自分の頭上を確認することはないと断言できる。
 誰と共に歩むのか、エルニーナ自身で決めた。もしかしたら、王妃に向いているなんて思える日は来ないのかもしれない。
 それでも、自分の頭上は確認しない。そう決めた。

「そろそろお時間ですよ。行きましょうか」
「そうだな」

 即位してしまえば、彼の立場は大きく変わる。
 ――だからこそ。
 今、その前に伝えておきたいと思うのだ。

「あなたと共に歩けて、私……とても幸せだと思うのです」

 そう告げるエルニーナの言葉に、彼は目をみはる。それからゆっくりと口角が上がっていって――今まで見たことがないような柔らかな笑みを見せてくれたのだった。
 

END




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