あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
 だが、マクシムが怒りを抑えられたのは、ほんの一瞬だけだった。次の瞬間には王座から立ち上がり、王笏を握った右手を振り回す。

「私は失敗なぞしていない!」

 きぃきぃと喚く声に、集まっている貴族達の間にも動揺する気配が広がっていった。

「どういうことなの……?」
「今年も、繁殖期の魔物は無事に抑えられたと聞いたぞ」
「失敗したというのなら、王都にも魔物が押し寄せてくるのではないか?」

 ナヴァリア王国の王都は、高い城壁に囲まれ、しっかりと守られている。だから、魔物が出現したところで、王都を囲う塀の中にいれば大きな問題にはならない。
 王都への出入りができなくなるから、食料や日用品がしばらく手に入らないかもしれないが、それも一時のこと。数か月程度ならば籠城できるようにしっかりと備蓄してある。
 だが、貴族達にとっては、そのわずかな期間が大問題になるらしい。さすがに貴族が好むような贅沢品までは備蓄していない。

「……皆の者! 落ち着け! 魔物は、辺境伯家の騎士達が討伐したそうだ。だが、今回の遠征、失敗したのはこの者――エルニーナ・ヴァレスクに責任がある!」

< 3 / 272 >

この作品をシェア

pagetop