あなたは王の器じゃありません 文官令嬢、辺境の地でその才を発揮する
「……この日とこの日とこの日、ベルク商会のゲオルグが納品に来ているな。彼は、倉庫に入らなかったのか?」

 ベルク商会は、先代辺境伯の頃から騎士団への物資を納入している商人だ。
 代表のゲオルグは、五十がらみの恰幅のいい商人で、物資だけではなく、辺境伯家の人々の生活も支えている。エルニーナも一度、顔を合わせたことがある。

「彼は、中庭で納品して終わりですね。倉庫に運ぶのは、騎士団の人と僕でやっているので。いくら辺境伯家との取引が長い商人でも、倉庫に入れるのはどうかな……って」
「それは、正しい判断だな」

 有能な商人は、倉庫に並ぶ品を見るだけで戦が起こる時期を予想できるなんて言われるほどだ。情報は秘匿せねばだから、迂闊に商人を倉庫の中に入れないのは当然のこと。

(……でも、彼が関わってるって可能性、あるのかしら……?)

 辺境伯家との取引で、ゲオルグはかなりの収入を得ているはずだ。わざわざ辺境伯家に楯突くような真似をするだろうか。

「備品の持ち出しは、今まで以上に厳重に管理することにしよう。セヴェロか、俺が任命する者を立ち会わせることにする」
「……それがよさそうですね」

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